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リコリス4

 大皿に盛られたふるまい物の残りを、ビール片手に、俺と福井と相楽とで囲んだ。
「何か、久しぶりだな。こうして揃って飲むの」
 それぞれとサシで飲む機会は幾度となくあったが、全員が揃うのは、たぶん、卒業以来一年以上なかったことだ。時折誰かから「飲もう」と誘われても、仕事が忙しかったり疲れ果てて動けなかったりで、俺がその誘いに乗ることはほとんどなかった。
「和希だけだよ、久しぶりなのは。俺たちはたまには会ってたから」
 相楽が福井に同意を求めると、福井もこくりと頷いた。
「そうか。俺だけ、なんだ」
 寂しい気持ちになる反面で、所詮自業自得だと言う声が自分の中にある。「飲もう」と誘われても、仕事が忙しかったり疲れ果てて動けなかったりで、俺がその誘いに乗ることはほとんどなかった。そうした誘いの中には、きっと四人全員が再び揃う機会もあったに違いなかった。
 いつでもまた集まれると思っていた。だから誘いを断るのに罪悪感は微塵もなかった。新しい生活に馴染むのに精一杯だったが、社会人一年目なんてそんなものだ。そろそろ仕事のペースも身体に染み付いてきて、時間を自由に出来るようになるのはまさにこれからだった。
 今年は絶対にジャム・ナイトに参加する。最後に孝成に会ったときにそう宣言すると、彼はとても喜んでくれて、それなら夏にはバンド復活だな、と言ったのだった。わかった、と答えると、それまでにちゃんと勘を取り戻しておけよ、と。それが、孝成との最後の会話だった。あれは、まだ冬のコートが必要な時分だっただろうか。
 まだジャム・ナイトには行けていない。でも、今月はなんとか行けそうだった。次の休みの日にはリードを買いに行かなきゃ、と朱音に話したのは数日前。どうせ箱買いしてくるだけなら私が行こうか? と言われて、再開の記念なんだから自分で行く、と俺は言った。
「孝成がさ」
 ずっと黙ったままだった福井が、ぽつりと口を開いた。
「和希が夏までには復活するぞ、ってすごい嬉しそうに言ってたんだ」
 約束の夏までは、あと少しだった。
「先月くらいかな。全然出てこないじゃんって文句言ってたら、そう言うな、って怒られた。来れるもんなら来てるからって。夏にはバンド復活だって約束したんだから、それまでは待とうって」
 酔いに任せて喚く福井に鷹揚に宥める孝成。それはきっと、大学時代と何ら変わることのない光景だったろう。
 待っていてくれたのか。でも、待ち切れなかったのはお前の方だなんて、俺には信じられないよ。待つなら、最後までちゃんと待っててくれなきゃダメじゃないか。



 4話ですが、絶対的に4話じゃありません。各話ごと、間が思いっきり抜けてる気がしますし、このままじゃ絶対繋がらんし。

 「話」ってつけなきゃいいんだな。うん。きっとそうだ。
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リコリス 3話

 俺の足元に、福井がじっと蹲っていた。俺の顔を見ることもなく場を譲ったのだった。それからずっと、こうして座り込んでいたのだろうか。
「福井」
 呼びかけると、ギシギシと音が聴こえそうなぎこちなさで、福井が俺を見上げた。
 ぞっとするような無表情。
「福井?」
 もう一度呼びかけて、俺もその場に座り込んだ。そして、福井と同じように棺を見上げる。
「和希」
 しばらくして福井がぽつりと呟いた。
「ん?」
「孝成、死んだんだって」
「うん」
「もう、いないんだよ」
「うん」
 こつり、と福井が額を棺に寄せる。
「なんでかなぁ」
「え?」
「俺、わかんないよ」
「福井?」
 三度目の呼びかけに福井が応える気配はなく、沈黙が流れていった。



 うー、ブツ切れの断片しか書けない。
 それでいいと思ってるからここで書いてるんだけど、これからどうやってそれを繋げるんだ……。

リコリス 2話

 客間に設えられた祭壇の前に横たわる孝成の遺体は綺麗だった。綺麗に清められて、すっぽりと棺に納められている。
 手を伸ばした先の孝成の土気色の肌と俺自身の肌の色の違いに驚いた。それさえなければ、眠っているだけだと言われたら俺は納得しただろう。けれど、その土気色が、そこにはもはや生命が存在しないのだと言う。疑うことを許さない、厳然たる事実を突きつける。
 そして、これは孝成じゃないと疑わせる。
 実感がなかった。
 ここで突きつけられている事実は、ただ目の前に横たわる身体が心停止して「死」と呼ばれる状態であること、その身体が孝成のものであること、ゆえに孝成は死んだのだと言えるということ、それだけだ。その状況がそう名づけられることになっていると知っているがゆえに「孝成が死んだ」と知っているだけで、俺はここで起きていることを何も理解できていないに違いなかった。でなければ、「孝成が死んだ」という事実に対してこんなにも無感動でいられる訳がない。
 食い入るように孝成を見つめ、そして何も自分の中で起こらないことに絶望して、俺はようやく周囲に目を向けることができた。



 とりあえず「2話」と銘打っておく。
 書き溜めたらちゃんと書き直す前提の駄文です。きちんと書けてからまとめて公開すりゃいいじゃん、と思うけど、やっぱり人の目に触れる場所で文章を書きたいんだと思います。そういう欲求がなかったら、Webで創作なんてしないよね。

 タイトルつけました。「リコリス」。由来はありますが、書き終えてからの話にしたいと思います。

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へっぽこ駄文書き。

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